なんて美しくて、哀しい映画だろうと思いました。
私の好きな時代背景、大正〜第二次大戦前の昭和のはじめは、関東大震災、世界恐慌、そして戦争・・・と、大変なことが次々と起こった時代であったにもかかわらず、多くの文化、芸術や文学が生み出された時代でもありました。
それは新しい時代に世界に向かって、キラキラと沢山の夢が溢れた時代とも言えます。
主人公の二郎も、その時代と共に、飛行機の設計士という、空への果てしない夢を抱き邁進していった人物。
大きな空への憧れ。
しかし、そのキラキラの美しい夢は、確実に、日本の破滅へと続いているのです。
そのことに途中から気付くと、もう涙が止まらなくなってしまいました。
飛行機という夢を抱き叶えようと、ただ頑張っている青年に何の罪もない。
しかし時代が進むにつれ、国家、戦争という中に、どんどん引きづり込まれていく無情さ。
その中でも、必死に、夢を守り、「ひとつの恋」も必死に貫こうとしていく二郎と恋人の菜緒子・・・・
「これを描かなければ死ねない」と宮崎さんは言ったそうだけど、ほんとうにこれが最後の作品になってしまうのかなぁ・・・。
関東大震災から始まるこの物語。
奇しくも3.11の震災の前日に絵コンテを描き上げたそう。
そしてあの震災の最中に制作が続けられた。
思い出しそうで怖い。という方もおられるかもしれないけれど、安心してほしい。
私は大丈夫でした。
公式サイトに宮さんの企画書の全文が公開されています。
まだ見てない人はそれを読んだほうがいい。
「時にマンガに」というところがキーポイント。
実在の人物をモデルにした、宮崎作品には異例のドキュメンタリータッチの作品ではあるけれど、そこはそれ、ファンタジックな宮崎さんの世界も存分に織りこまれています。
過去を背負い、戦争という罪を背負い、それでも必死に生き抜いた人たちがいて、今自分がここにいる。
今を生きる日本人全ての人が見るべき。と思いました。
見終わった後の無情感は、「もののけ姫」見終わったあとの感覚に似てるかなぁ・・
でも3.11を経験した私たちには、もう答えは出てるんだよね。
その先人達の想いを無駄にしないよう恥じないように、正直に懸命に生きていくしかないのだ。
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